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   平成22年度「生と死」のセミナー

「モノを通じて見た現代人の死生観」 鈴木岩弓 氏

 

   死生観というのは、死をどのように見つめ、また死を踏まえた上での生をどの
  ように考えるのかといった、死や生にまつわる観念を意味しています。観念とい
  うのはそもそも不可視であるため、いくら知りたくても他者の観念を直接的に把
  握することは困難です。観念というものは、時には観念している本人ですら自覚
  的に把握していることがない場合すらあるからです。

   私は大学院の時には「祖先祭祀」の研究をしていました。そのような研究を行
  う上でのまず基本的な問題が、「祖先」とは何かという、いわば人々のもつ「祖
  先観」の把握でした。そのような研究をしている際に、いつももどかしく思って
  いたことは、正面から「祖先」とは何かと聞くことで、果たして他者の祖先観を
  把握することが可能なのだろうかという点でした。有名な先生方が実施された調
  査の中で、正面突破の「あなたにとって祖先とは誰ですか」などといった質問が
  なされているのをしばしば目にしたのですが、そのような論文を見るたびに、ご
  本人自身がそのような質問文を求められた場合にどのように答えられるのだろう
  かと、いつも大変疑問に思っておりました。

   私が感じたのと同じ疑問を感じていたのが、アメリカのコーネル大学のスミス
  でした。彼は日本人に「祖先とは誰か」と聞いても、時と場合によって異なる回
  答をすることに悩み、祖先観を搦め手から明らかにすることに成功しました。多
  くの日本人は仏壇を拝んでいるときに「祖先を拝んでいる」と答えるのだそうで
  す。そこでスミスは、仏壇の中の何を拝んでいるのだろうと確かめてみると、ど
  うやら位牌を祖先として拝んでいるようだと理解します。そこで彼が思い立った
  祖先観解明の手法といいますのは、仏壇の中の位牌を逐一あなたの誰なのですか
  といった質問で整理していくことでした。つまりこれは父、これは父の父、父の
  父の父……、といったようにです。
   こうしてスミスは、日本人の祖先観という不可視の観念を、位牌というモノを
  通じて把握することで実現したのです。(抄録より抜粋)

   本講演では、墓石や遺影といったモノを手がかりにして、現代日本人の死生観
  についてお話して下さいました。現代人の宗教離れやイエ意識の希薄化がお墓に
  も現れていることに大変驚きました。




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遺族の会 ふれあい
ホスピス 110番
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仙台ターミナルケアを考える会