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       第130回「生と死のセミナー」
    

     「がんと遺伝とカウンセリング」

             安田 有理 氏
             
石巻赤十字病院 乳腺外科部 
                              遺伝・臨床研究課
                       認定遺伝カウンセラー

 
 

現在、日本は、男性、女性ともに、おおよそ2人に1人が一生のうちにがんと診断される時代になりました。そして、女性の約14人に1人が一生の間に乳がんを発症するとされます。

昨年、米国人女優が、乳がんと卵巣がんのリスクが高いことから両方の乳房を切除する手術を受けたことが大きく報道されました。それ以来、「予防的乳房切除術」や「遺伝子検査」について耳にする機会が増えたと思います。

乳がんの多くは遺伝と関係なく発生しますが、510%は遺伝性と考えられています。遺伝性乳がんのうち頻度が高いのが「遺伝性乳がん・卵巣がん」です。その原因として、BRCA1BRCA2という2つの遺伝子が見つかっています。これらの遺伝子のいずれかに病気の原因になる変化(病的変異)がある場合、乳がんや卵巣がんのなりやすさ(リスク)が高くなります。

乳がんのリスクは一般の人では約5%ですが、「遺伝性乳がん・卵巣がん」の場合、すなわちBRCA1またはBRCA2遺伝子に病的変異がある場合の乳がんリスクは5687%。同様に、卵巣がんの一般のリスクは約1%ですが、「遺伝性乳がん・卵巣がん」の場合は2744%とされています。ただし、これらの遺伝子に病的変異がある場合に必ず乳がん、卵巣がんになるというわけではありません。その「なりやすさ=リスク」が高くなるということです。ですから、リスクの高さに合わせた対策をとることが大切になります。対策の1つとしては、早めに、通常よりも短めの間隔で、継続的に検診を受け、乳がんの早期発見を目指すという方法があります。また、予防的に乳房や卵巣を摘出するという方法もあります。病的変異を有する人がどのような対策をとるかはケースバイケースです。専門家とよく相談して決めていきます。

「遺伝性乳がん・卵巣がん」の場合には次のような特徴が家系内でみられることがあります。

・乳がんや卵巣がんを発症した人が複数人いる

・両方の乳房にがんを発症した人がいる(特に、最初の乳がんが50歳未満で診断された場合)

・若い年齢(40歳未満)で乳がんを発症した人がいる

・乳がん・卵巣がんの両方を発症した人がいる

・男性の方で乳がんを発症した方がいる

これらの特徴に当てはまる方がすべて「遺伝性乳がん・卵巣がん」というわけではありません。その可能性が考えられるということです。石巻赤十字病院・乳腺外科では、問診票で上記の特徴に当てはまる方にはより詳しくご家族についてお聴きしています。遺伝性が考えられる方にはその可能性について、また乳がん・卵巣がんのリスクや遺伝子検査などについてお話し、その方の今後の対策について一緒に考えるような取り組み(遺伝カウンセリング)を行っています。 

正確な情報を知ることで不安が軽減することがあります。ご自身・ご家族の乳がん・卵巣がんのリスクが気になる方は遺伝カウンセリングをご利用いただければと思います。



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遺族の会 ふれあい
ホスピス 110番
仙台ターミナルケアを考える会