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          平成28年度 定期総会特別講演

    「超高齢化社会を支える」
   〜終末期医療と在宅医療・介護連携〜
 
            武藤 真祐 氏
                    「祐ホームクリニック」
                     理事長


循環器内科医として病院勤務しながら、アルバイトで在宅医療も手掛け、考え方の転換を経験した。病院では、患者さんが医療者を訪れ、医療者が決めたことに従いながら医療が進められる。在宅医療では患者さんの生活の場に医療者が訪れる、まず患者さんがドアを開けてくれないと家にも入れない。患者さんの許可がなければ何もできない。まさに病院とは主客が転倒している医療形態である。細くなった心臓の血管を広げる技術的なことにも興味はあったが、それよりも術後に患者さん・家族を訪ね、失っていたかもしれない命を取り戻した喜びを共に分かち合うことに医者として生きがいを感じるようになっていたので、在宅医療への転向に違和感はなかった。宮内庁の侍医を経て、米国のコンサルティング会社マッキンゼーに勤務して、経営とリーダーシップについて学び「祐ホームクリニック」を立ち上げた。経営を学んだ理由は、問題解決の手法を身につけたかったからである。超高齢社会における医療の問題は献身的に仕事をすれば解決できるようなものではなく、社会の仕組みや制度としての対応が必要だと考えたからである。

東京でクリニックを立ち上げて間もなく東日本大震災が発生した。同年5月に石巻に入り、この惨状こそ在宅医療を必要とする状況だと思った。医療機関が殆ど機能停止に追い込まれて入院も外来診療もままならず、医療者も被災者で疲労困憊して、地域コミュニティは崩壊寸前で、高齢者は孤立しつつあり、街には不安が満ちていた。未曽有の震災はゆっくりと姿を現すはずだった超高齢社会の課題を一気に浮き彫りにしているように思えた。石巻を訪れたその日のうちに「祐ホームクリニック石巻」の立ち上げを決めた。9月に開業し、これを足掛かりに全国からの医師の応援や各方面からの種々の支援を受けて何とか診療を開始した。そして、石巻赤十字病院の日下潔先生を院長に招聘することが出来て石巻の在宅医療体制は一気呵成に進展した。

質の高い在宅医療を行うためにICTを開発した。医師同士が互いに相談できる遠隔相談システムを確立した。また、医師が医師の仕事に専念するために無駄な書類作業を削減し、さらには多職種連携での情報共有と地域連携を進めるために、在宅医療連携室の設置を行った。そして2012年に「祐ホームクリニックとその仲間たち」のような体制で始められた地域情報連携は、その後石巻市医師会を始め、多くの方の協力により、2015年には参加事業所が70を超えるまでに発展し、現在は事業母体が医師会に移譲されている。

今後の日本の医療にとって最大の問題点は、看られる方・看る方の双方に起こっている高齢化と、この分野に携わる人的資源の不足である。そこで日本より高齢化のスピードが早いシンガポールにも”Tetsuyu Health Holding”2015年に立ち上げ、日本では未開拓な遠隔医療や介護用ロボットの開発などの試みを行っている。

今日は在宅医療の必要性、在宅医療を円滑に行うためのシステムの構築、多職種連携のための患者・家族の情報共有の重要性を、石巻を例に挙げて話した。

私は、医師として最大の喜びは「看取り」の場に居ることができる事だと考えて居る。看取りというのは、逝く方の人生が凝縮した最も厳粛な時である。だから普通は余程親しい人か、家族しか共有できない時間・空間に、在宅医療に携わっているからこそ、我々も参加させてもらえる、言葉は悪いが、それは在宅医療従事者の『役得』だとさえ思う。




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リーフレットはこちらから ダウンロードできます↓
遺族の会 ふれあい
ホスピス 110番
仙台ターミナルケアを考える会