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 平成24年度 第123回「生と死」のセミナー

   「がん患者として、
      リンパ浮腫セラピストとして」
 
            大塚 弓子 氏
                    リンパ浮腫セラピスト
 

 私が『がん告知』を受けたのは、今から17年前の高校3年生の時でした。病名は、甲状腺がん。17歳である日突然、がん患者となってしまったわけです。たった、紙切れ一枚に簡単な説明でがん告知を受けただけで、まな板の上の鯉状態で手術に挑むことになり「(がんを)切れば終わるからね」という医師の言葉を信じました。その言葉を信じたものの、見事に裏切られました。術後に後遺症として、声が出にくい、食べ物や飲み物の飲み込みが悪いという後遺症が残りました。全く説明がなかったため、たぶん甲状腺の側にある糸ミミズのような神経を手術で切ってしまったためだろうと自分で推測するしかありませんでした。

 自分が受けた医療に疑問を持ち、自分も医療の勉強してみたいと思い、一浪してリハビリの先生になるために学校に入学しましたが、体調が悪化して、結局、退学することになりました。その体調が悪かった時期に、自分の人生を振り返りました。その時に気が付いたのは、『自分が、がん患者だと認めたくなかったんだ』という事でした。がんに関するものは、全て避けている自分に気が付きました。自分ががん患者だと認めてしまうと、死への恐怖がいっせいに襲い掛かってくる気がしたのです。

 精神状態は最悪で、体調も最悪。そんな中、鍼灸治療院へ通院をしてみることにしてみました。そこで、人の話をじっくり聞いてくれて、人の手のぬくもりに包まれる治療を受け、私の心と体が良くなっていくのにしたがって、自分もこの仕事をしたいと思い、鍼灸学校への進学を決意しました。23歳で鍼灸あんまマッサージの学校に入学、26歳で卒業の日を迎えましたが、卒業式の翌日に、がん再発の告知を受けました。2回目の手術は、自分でも手術や治療について色々と調べられ、主治医に質問することができたので、安心して手術を受けることができました。ただ、今度は術後に顔面が腫れてしまうリンパ浮腫という後遺症が出ました。

リンパ浮腫という病気は、手術でリンパ節を採ったり、放射線をあてたことなどで、リンパ液の流れが滞り、乳がんであれば腕が、子宮がんなどの婦人科がんや前立腺がんなどでは脚が病的にむくんできてしまう病気のことです。私は首のリンパ節を採ってしまったため、術後に顔面がむくんできてしまいました。主治医にむくんできたことを告げても、術後はそういうものだからという反応でした。私は、一度リンパ浮腫をおこすと改善はするが、完治はないという事実を知っていたので、勉強するために持ち込んでいたリンパ浮腫の本をみながら、顔面にリンパ浮腫用の医療マッサージをおこなうことにしました。翌日には、むくみがスッキリしたのですが、なぜにむくみがとれたのか?と質問してきた看護師さんに、本を見ながらリンパ浮腫用の医療マッサージをおこなったことを告げると、なんでそんなことをしたんですか!と猛烈に叱られました。その時に、外科病棟の看護師さんでもリンパ浮腫の治療方法を知らないんだと驚きました。そして、同時に、私が資格を取って、リンパ浮腫で苦しんでいる患者さんをサポートしよう!と思い立ちました。

そこから、また何度も努力を重ねて、最終的にはリンパ浮腫セラピストの資格を取ることができました。平成19年からは石巻赤十字病院リンパ浮腫外来に勤務を開始し、リンパ浮腫の患者さんの治療に携わることができました。

そして、石巻赤十字病院を退職した今年、私が、がんになってちょうど17年を迎えます。17歳でがん告知を受けて、17年間がん患者として生きてきました。今年は、がん患者ではなかった歳月とがん患者になった歳月がちょうど同じくなります。来年からは、がん患者として生きていく歳月の方が長くなっていきます。これからどんな困難が待ち受けているのかもわかりませんが、一日一日生かされている奇跡に感謝しながら生きていきたいと思います。




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リーフレットはこちらから ダウンロードできます↓
遺族の会 ふれあい
ホスピス 110番
仙台ターミナルケアを考える会