日本は超長寿国になりましたが、それにともない認知症の人が増えています。65歳以上高齢者の15.7%(462万人)に認知症が出現し、予備軍とされる軽度認知障害は13%(400万人)に達しているという調査結果が報告され衝撃が走りました。
認知症は、記憶の障害(もの忘れ)、時間・場所・人物の見当識の障害、判断力の低下、実行機能(手順)の障害があって日常生活に支障を来している状態と定義されます。
加齢にともなうもの忘れは、①体験の一部を忘れる、②もの忘れの自覚がある、③行動の異常をともなわない、④別の機会に思い出せる、という特徴があります。他方、認知症では、①体験の全部を忘れる、②もの忘れの自覚がない、③行動の異常をともなう、④思い出せない部分に作り話が混じるなどの特徴があり区別されます。
認知症の症状は中核症状と行動・心理症状に分けられます。中核症状には、記憶障害、見当識障害、判断力の低下などが含まれます。中核症状は程度の差はあれすべての人にみられ、疾患の進行とともに悪化しますので、神経細胞の消滅にともなう能力の喪失と考えられます。
一方、行動・心理症状には、妄想、幻覚、睡眠・覚醒リズムの障害、食行動異常、道に迷う(徘徊)、暴言・暴力・攻撃性、介護への抵抗、不安・焦燥感、抑うつなどが含まれます。行動・心理症状は出る人と出ない人があり、疾患の重症度とは比例しませんので、神経細胞消滅の直接の症状とは言えません。
行動・心理症状は本人の認知症になる前の性格や些細な体の不調などの本人の要因、安全配慮に欠け、刺激のレベルが適切でないなどの環境の要因、さらに不適切な対応などの介護者の要因の3つの要因によって生じます。
代表的な認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4種類です。
4種類にはそれぞれ特徴があります。アルツハイマー型認知症は若年から高齢の女性に多く、早期にもの忘れの自覚が失われ、もの盗られ妄想や道に迷う(徘徊)などの症状が出現します。
血管性認知症は高齢の男性に多く、急性に発症し階段状に悪化します。意欲の低下と感情失禁(泣きや笑いが止まらない)が目立ちます。
レビー小体型認知症は認知機能の変動が著しく、人物や小動物の幻視が活発にあり、転びやすいという特徴があります。
前頭側頭型認知症では前頭葉と側頭葉に限った脳萎縮が見られ、多幸、抑制の欠如、常同行為、周徊、攻撃性、過食などを特徴とします。
認知症への対応は、非薬物療法、薬物療法、適切なケアを適宜組み合わせて行います。
ケアに当たっては、一人ひとりがかけがいのない存在であることを認識し、「認知症」にとらわれずに「その人」を理解することが大切です。よいケアを続けるには、介護者も
息抜き、リフレッシュをし、各種サービスを上手に利用する必要があります。
最近は認知症の人たちがカミングアウトをし、本人たちが団体(日本認知症ワーキンググループ)を結成し、社会に向けて本人たちの不自由を訴え、本人の意向を尊重した政策の推進を要望しています。
日本認知症ワーキンググループは、2018年11月に「認知症とともに生きる希望宣言」を公表しました。「一足先に認知症になった私たちからすべての人たちへ」というサブタイトルがついており、本人の力を活かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、暮らしやすいわがまちを、一緒につくっていきます、と高らかに謳っています。
たとえ認知症になっても安心して暮らせるまちを作ることが私たちに問われています。
戻 る